ネコちゃんに多い病気(異物誤食のこと:前半)
こんにちは!松波動物病院メディカルセンター獣医師の松波登記臣です。今回は『ネコちゃんに多い病気(異物誤食のこと:前半)』をお届けします。
ネコちゃんに多い病気、というよりもトラブルとして有名なのが、『異物誤食』ですね。。。みなさまが飼われているネコちゃんは大丈夫でしょうか?一度は“ハッ”としたことは経験されているかもしれません。ネコちゃんが部屋にたまたま落ちていた物を口にして遊んでいるのを見て、「ダメェ〜〜!!」って言われたご家族のみなさまも多いと思います。動物病院で仕事をしていると、定期的に『変なもの食べてしまった』とか『もしかすると○○を食べたかも』とか『いつも遊んでいたおもちゃの紐がない』などご家族からご相談されることもあります。
私たち動物病院従事者にとって、ネコちゃんの『異物誤食』はとっても怖い病気という認識です。怖がらせるつもりはありませんが、死亡率も非常に高い病気でもあり、また異物を摘出するために開腹手術をしなければいけなくなるケースもある病気なのです。また順序が逆転してしまいましたが、診断も難しいので(確たる証拠がない場合)、獣医師泣かせの病気でもあります。
そこで今回は、『異物誤食』について前半・後半(後半は2部構成)にかけて説明していきたいと思います。前半では、どのような物(異物)を誤食してしまうのか?どういう症状が出てしまうのか?をご紹介し、後半では、動物病院でどのように診断され治療されているのか?また対策などをご紹介していきたいと思います。繰り返しお伝えしますが、『異物誤食』は非常に注意が必要であり危険性が高い病気です。しっかりお読みになって、ネコちゃんとの生活に役立てて頂ければ幸いです!!
1. どのような物(異物)を食べてしまうの?
上記に示した画像では、異物と毒物を紹介しています。特別、ネコちゃんすべてに当てはまるものではありませんが、異物ではダントツで“ひも”が危ない異物になります。私たち獣医師は、その“ひも”のことを紐状異物と呼びますが、ご家族から「ひもを食べちゃったかもしれない」とお聞きするたびにヒヤッとしています。それだけ紐状異物は危険になります。どれだけ危険なものかは後述致します。それ以外には、ネコちゃんだとプラスチック製品やゴム製品、そして硬貨やビニール袋などが挙げられますが、ネコちゃんは物理的な異物より毒性がある物を誤食することもしばしばあります。その代表的な毒物は“観葉植物”や“ユリ科植物”です。こちらも後ほど、症状などはご紹介致します。
ちなみに以下の画像はとある論文からの引用ですが、硬貨を飲み込んでしまったネコちゃんのレントゲン写真です。
2. どういう症状が出ちゃう?
主な症状は“嘔吐”です。その他には食欲不振や酷い場合は下痢などを呈しますが、もっぱらメインとなる症状は“嘔吐”です。ちなみにとある論文には、こう書いてあります。
・誤食当日は58%で嘔吐
・翌日まで嘔吐10回以上で腸閉塞35%
・腸閉塞時の急性膵炎は8%
何やら恐ろしいことと数字が書いてありますが、約半数近くのネコちゃんが異物誤食した当日に嘔吐をしています。さらに翌日までにはその回数は上昇し、10回以上だと腸閉塞(異物によって腸のどこかに詰まってしまう状態)に3割くらいのネコちゃんが陥っていると言われています。また補足ではありますが、腸閉塞時に急性膵炎を併発してしまっているネコちゃんはそのなかで約8%いるそうです。それによって、嘔吐回数が急増しているケースもあると思われます。
ちなみに以下の画像は、肛門から“ひも”が出ているネコちゃんです。私自身も、口から肛門まで“ひも”が繋がっていたネコちゃんをみたことがありますが、そのネコちゃんは外科手術になってしまいました。
獣医師 松波登記臣
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