ネコちゃんに多い病気(泌尿器のこと:前半)
こんにちは!松波動物病院メディカルセンター獣医師の松波登記臣です。
今回は『ネコちゃんに多い病気(泌尿器のこと:前半)』をお届けします。ネコちゃんに多い病気として有名なのが、やはり尿路結石ですね。。膀胱結石や尿道結石など、一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか?それ以外には、膀胱炎などもありますが、それらをまとめて“猫の下部尿路疾患(FLUTD)”といいます。そのFLUTDとして有名なのが、尿路結石、細菌性膀胱炎、特発性膀胱炎といわれています。
先述しましたように、尿路結石は、膀胱結石や尿道結石などが挙げられ(その他にも腎臓結石や尿管結石も存在しますが、今回は下部→膀胱や尿道に特化したお話になるので、上部→腎臓や尿管のお話は割愛させて頂きます)、結石が作られてしまう病気になります。細菌性膀胱炎は尿道などから細菌(バクテリアですね)が膀胱に入り込んで感染してしまい炎症を引き起こす病気です。そして最後になりましたが、『特発性膀胱炎』というものがありますが、こちらはあまり馴染みがない病気かもしれません。しかし、この『特発性膀胱炎』というのが、ネコちゃんの膀胱炎の約60%を占めていると考えられているのです!無視できない病気ですよね。。。
今回は、この『特発性膀胱炎』についてご家族のみなさまと一緒に勉強していきたいと思います。少し難しい話が出てくるかもしれませんが、なるべく診察で話をしているときのようにわかりやすくまとめてみました。『特発性膀胱炎』は結構複雑ですので、前半と後半の2部構成にしてみました。今回は前半になります!!
- 『特発性膀胱炎』の“特発性”ってなに??
ざっくりいいますと、原因があまりわかっていない病気(原因不明の病気)が発症したときに使われる言葉です。ですので、特発性膀胱炎の原因は、わかっていません。
- 『特発性膀胱炎』の症状ってなに??
ちょこちょこトイレに入り込んでおしっこをする頻尿であったり、おしっこの色が赤くなってしまう血尿がでてしまったりします。
- 『特発性膀胱炎』って原因不明の病気?本当にそうなの?
特発性膀胱炎のときは、おしっこの検査(尿検査)をしても、結晶(結石の成分)や細菌などが一切出てくることがありません。血液の成分である赤血球くらいです。なのに、頻尿や血尿が出てくるのです。しかし、考えられている要因はいくつかあります(4つ)。
- 膀胱自身の問題。膀胱の内側にあって尿に触れている膜がきれいに整っていない場合、尿の刺激によって神経が過敏になってしまうことで頻尿になってしまうということ。
- 膀胱にある神経を過敏に反応させてしまう物質が多く発生してしまう問題。ちょっとわかりづらいですよね・・・。膀胱の周りにはいくつか神経や細胞が存在しています。その神経や細胞のやり取りのなかで出てくる刺激物質(ヒスタミンといいます)が膀胱に炎症を引き起こし、出血させたりしてしまうのです。
- ストレスの問題。ストレスの原因は多く存在します。例えば、仲が良くないネコちゃんがいたり、近所の工事の騒音によるものであったり、引っ越しだったり。
- ストレスによって乱れるホルモンバランスの問題。ネコちゃんだけでなく、人間もワンちゃんもストレス状態になると、脳にある視床下部という場所が刺激を受けることでステロイドホルモンやカテコールアミンといったストレスを和らげてくれるホルモンが分泌されるのですが、特発性膀胱炎のネコちゃんの場合、この一連の流れが悪くなっており、ストレスが和らぐことがなく膀胱炎になってしまうのです。
- 『特発性膀胱炎』の検査は?どうやって診断するの?
特発性膀胱炎を診断するためには、他の膀胱炎(細菌性膀胱炎や尿路結石による膀胱炎)があるのかないのかを確認することが重要です。それと、痛みがあるのかどうかも重要になります。具体的には、おしっこ検査である尿検査、細菌がいるかいないかを調べるための尿細菌培養検査、膀胱の形をリアルタイムで確認することができる超音波検査(エコーですね)、それと尿路結石や先天的に異常がある尿路を確認するためのレントゲン検査などを駆使し、特発性膀胱炎の診断をしていきます。
前半はここまでとなります。少しは『特発性膀胱炎』のことがわかってきましたか?次回の後半は『特発性膀胱炎』の治療のことなどを書かせて頂きますので、よろしくお願い致します。また今この『特発性膀胱炎』などで悩まれているご家族やお知り合いの方が近くにいましたら、ぜひともこの記事をご紹介してあげてください。少しでもみなさまの悩みの解決の一助になりましたら幸いです。
松波動物病院メディカルセンター 獣医師 松波登記臣
獣医師 松波登記臣
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