猫の毛玉について獣医師の目線でアドバイス!
エキゾチックショートヘアは、短毛であっても飼い主様のブラッシングが必須な毛質と特質を持ち合わせています。
それは毛質がふわふわのダブルコート、そして鼻ぺちゃさんという特徴です。
今回はエキゾチックショートヘアに多いお悩みについて獣医師目線で回答していきます。
名前:ペコ
ペットの種類:エキゾチックショートヘア
年齢:10歳
性別:オス(去勢済)
鼻ぺちゃの猫さんはブラッシングが必須です
ブラッシングの延長希望&構ってほしいぞ!
通常、短毛の猫は自分でグルーミングをするので、そこまで毛玉になることはありません。
しかし、鼻ぺちゃの猫さんはその顔の構造から、舐める、食べる、飲むが不得意なことが多いのです。
これはエキゾチックショートヘアだけでなく、ペルシャ(チンチラ)、ブリティッシュにも見られる特徴です。
食べるのが上手ではないことも多いので、口の周りや顎が汚れがちになるため、さらに毛玉になりやすい状況です。
そのため、飼い主さんのブラッシングが必須となるのです。
ペコさんは毛質がふわふわのダブルコートのため、短毛でも非常に毛玉になりやすいと言えます。
ペコさんの偉いところは、ブラッシングが大好きというところです。
毎日のメンテナンスとして、全身と顔回りはブラッシングをして綺麗にしてあげましょう。
ペコさんは短毛ですが、長毛の猫では毛が絡まりやすいために、ブラッシングで引っ張れて痛いこともあって、ブラッシングが大嫌い!ということも多いです。
その場合は、全身毛玉になっていることもあるので、皮膚病の予防のためにも、全身毛刈りを提案させてもらうこともあります。
毛玉が出来てしまったときの正しい対処法は?
これはこれで問題はないのですが、ペコさんも不満げではあるので毛玉を作ってしまったときの正しい対処法を知っておきましょう。
大切なのは小さなうちにほぐす!ということです。
小さな毛玉のうちは、指でも少しずつちぎればほぐれていきます。
やや大きな毛玉であればスリッカーといわれるクシで、外側から少しずつほぐします。
今回のペコさんは根本からしっかりと毛玉ができてしまったとのことなので、トリマーなどのプロであってもスリッカーだけでは厳しく、ハサミやを使用してほぐさなくてはならないでしょう。
ハサミは猫の皮膚を切ってしまうことが多いので、プロにまかせましょう。素人が猫の毛をハサミで切るのは非常に危険です。
バリカンは根元から毛を取るので禿げが目立ってしまいます。
しかし、短時間で毛玉を取ることができるので、猫への負担は最小にできるでしょう。
大きな毛玉をバリカンではなくスリッカーとハサミでほぐす場合には、禿げはできないのが良い点です。
しかしかなりの時間がかかり、しかも毛が引っ張られるので猫にとっては辛い時間が続きます。
そのため大きな毛玉が、根元からがっちりとくっついてしまっている時には、獣医師やトリマーにバリカンで毛刈りをしてもらうのがお勧めです。
本当に毛玉だけ?病気のサインにもなる毛玉
短毛の猫さんの毛玉ができやすくなってきた時には、獣医師としては隠れた病気もないのか心配になるところです。
ペコさんのケースでは、毛玉の原因が「ブラッシング不足」と解っているので良いのですが、今までブラッシングしなくても大丈夫だった猫さんに毛玉ができるようになった場合には注意が必要です。
毛繕いができないような健康面の問題があるかもしれないからです。
10歳以上の高齢期に入っている猫では、歯周病や口内炎で口に痛みがある、あるいは隠れた関節炎で体を曲げると痛みがある、さらには全身状態の悪化が隠れているという時に、毛玉ができやすい傾向にあります。
猫の口内炎と毛玉
今までに毛玉はあまり出来なかったのに、最近は毛玉ができるようになったという時には、念のために口の中をチェックします。
口内炎や歯周病の痛みがあって、毛繕いができていない可能性があるためです。
しかも前足が少し汚れがち、水を飲むときや食べるときに、前足で口を気にする素振りがある、という時にはさらに強く口内炎や歯周病を疑います。
口内炎や歯周病が酷い場合には、涎(よだれ)が増えるために前足にそれが付いていることがあります。
また飲み食いするときに痛みがでるために、前足でそれを掻く素振りが出てきます。
毛玉とともに、上記のサインがある時には受診しましょう。
猫の関節炎と毛玉
高齢の猫では隠れた関節炎が発生していることが多く、慢性的な痛みを感じている猫が多いです。
猫によっては、体をまげる態勢に痛みを感じて、下半身の毛繕いが不足してしまって毛玉ができてしまうこともあります。
猫は自分で活動を制限したり、痛い態勢をとらないようにするので、痛くても走り回ってしまう犬と違って関節炎が劇的に悪化しないために飼い主さんが気づいていないことがほとんどです。
そのため、毛玉ができた高齢猫では、関節炎が隠れていないかを確認させてもらうこともあります。
猫の毛玉と体調不良
慢性腎不全の猫や糖尿病の猫では、長毛種では特に、毛玉が大きくできてしまっていることがあります。
上記二つの病気だけでなく、何かの病気で入院治療が必要なほどに重症な猫は、毛繕いをしません。
入院初日ではぐったりとしていて動きもない猫が、だんだんと治療によって回復してくると、入院室で毛繕いを始めます。
それを見て、看護師も獣医師も「猫らしさが戻ってきている!」と嬉しく思います。
毛繕いは健康のバロメーターにもなります。
毛玉は毛繕いをしていないという体調不良のサインかもしれません。
獣医師からお勧めする猫のサマーカット
猫はトリミングが苦手な生き物ですので、本来であればサマーカットなどはお勧めしません。
しかし、人の都合で毎日のブラッシングがどうしてもできない、猫が嫌がってブラッシングが難しいなどの理由で、全身が鎧のように毛玉というよりはフェルトのようになってしまう猫がいます。
その場合、毛玉の下の皮膚に炎症がおきてしまったり、毛玉があることがストレスで体調を崩すということもあるので、毛玉ができないように毛を短くカットした方が良いというケースもあるのです。
家で猫の毛を切ってはダメ!
猫の全身の毛を短くするとしても絶対に家でやろうとは思わないでください。
飼い主さんが間違ってハサミで猫の皮膚を切ってしまった、という症例は何件も経験があります。
猫の皮膚は薄く、予想よりもよく伸びるので、毛しかないと思ったところにも実は皮膚があった!という事態となってハサミで切られてしまうのです。
当然ながらとても痛いので、猫はとても怒りますし、飼い主さんとの関係性も悪化することもあるくらいです。
プロに猫の毛を短くしてもらおう!
猫のトリミングを実施しているトリマーさんは少ないので、探すのは大変です。
ただ、慣れているトリマーさんであれば、すっきりさっぱりと短くて毛玉が出来ないスタイルに仕上げてくれます。
さらに、猫の性格によっては、カットが無理ということもあるでしょう。
その場合には、かわいらしさや綺麗なカットよりも健康面を重視して動物病院で全身バリカンを実施してもらうことがあります。
動物病院の良いところは、猫に軽い鎮静を実施することで、猫としては寝ている間に全て終わっている、恐怖を感じる時間が少ない、というところでしょう。
事前に怖さを軽減する飲み薬を推奨している病院もあるので、病院が怖い!という猫ではかかりつけの先生に相談してみましょう。
まとめ
鼻ぺちゃの猫の品種であるペコさんは、少しの間で毛玉ができてしまったとのことですが、通常であれば毎日のブラッシングができる素敵な猫さんです。
それでも毛玉ができてしまった時には、できるだけ小さな毛玉のうちに対処し、大きくなりすぎてしまった時にはプロの手でほぐすか、取り除いてもらいましょう。
毛玉が病気のサインであることもあるので、今まで毛玉ができなかった猫に大きな毛玉ができるようになってきた時には、体調に変化がないのかを獣医師に確認してもらうのをお勧めします。
どうしても毛玉ができがちで、ブラッシングも難しく健康に害が出そうな時は、猫もサマーカットなど毛を短くカットする、刈り込んでもらうというのも選択肢に入れると良いです。
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