犬猫の療法食の効果と意外な落とし穴とは?
犬猫の療法食はお薬と同じように獣医師が病気から必要性を判断して、動物病院から処方される特別なフードです。
療法食は、病気のある犬や猫にとって、とても良いバランスで調整された食事になっており、お薬と同様に治療に大きな効果があります。
療法食にしなければ、病気が再発してしまうケースもあるほどです。
これほど効果のある療法食ですが、実は健康な犬猫に与えると、逆に体に負担になってしまうものがあることはご存じでしょうか?
療法食なら健康な犬猫の体にも良いはずよね?と、病気でもないのに、獣医師の指示なく療法食を与えてしまう飼い主さんも多くいるのですが、これは逆に健康を害することもあるほどです。
また、腎臓も消化器も尿路結石もケアしたい!という気持ちから、独断で3種類の療法食を混ぜて上げている飼い主様などもいますが、それでは療法食の効果を打ち消しあって、あまり意味のない食事内容になってしまっていることが多いです。
療法食の効果を最大限に活用するために、この記事では療法食の正しい知識と気を付けるべき点について解説します。
犬猫の療法食とは
療法食は治療食とも呼ばれ、病気を治療するために非常に大きな効果をもつ食事です。
お薬と同様に、処方(しょほう)という形で獣医師から療法食を渡すのはそのためです。
病気のある動物にとって、体に負担なく治療効果を高めることができるので、メリットが多くあります。
しかし、療法食は病気の動物にとって良い食事なのであって、健康な動物にとって最良な食事ではないことが多いです。
つまり、病気に合わせてそれぞれの療法食は栄養素のバランスを限界まで制限したり、限界まで多く配合してあったり、塩分が多くなっていたり、逆に減らされていたり、あるいは太りやすい食事になっているためです。
<犬猫の療法食の特徴>
・治療効果が大きい
・病気に合わせて調整してある
・獣医師の指示に従う必要がある
・健康な犬猫には良くないものもある
犬猫の療法食の与え方
基本的には診察をした獣医師の指示に従うことが大切です。
それぞれの病気や症状の状態によって療法食の与え方も変化するためです。
一般的には、療法食を使用する場合には、その治療食とお水のみを犬猫に与えなくては効果が半減してしまいます。
なぜなら、上記でも述べたとおり、療法食は栄養のバランスを絶妙に調整してあるものや、特定のものを限界まで減らしてあるものが多いためです。
おやつや他のフードを混ぜてしまうと、そのバランスが崩れてしまう、あるいは栄養素を制限できないことになり、療法食の効果が激減してしまうのです。
そのため、療法食をあたえるときは他のフードやオヤツは禁止になることが多いです。
ただ、療法食を開始するときには、今までのご飯に療法食を少しずつ混ぜながら下痢や吐き気などが起きないことを確認しながら与えます。
療法食は担当獣医師の指示に従って与えることが大切なので、必ずしも上記のようなあげ方ではないケースもありますが、多くは10-14日ほどかけて療法食の割合を増やしていき、最後は100%療法食だけにします。
獣医師に確認せずに療法食を辞めてしまうのは危険ですので、自己判断で食事を変更したり、療法食を止めたりせずに、獣医師の指示を貰いましょう。
<犬猫の療法食の与え方>
・必ず処方した獣医師の指示に従う
・他のフードやオヤツは禁止であることが多い
・開始するときは少しずつ与えることが多い
・体調不良がでるなら獣医師に相談する
・自己判断で変更、中止してはいけない
犬猫の療法食と総合栄養食そして一般食とは
犬猫の療法食は、病気の動物のために作られた食事で、特別な栄養バランスになっているため、治療効果は高いものの、健康な犬猫のためには足りない栄養素や、多すぎる栄養素が入っているものもあります。
総合栄養食は、健康な犬猫が健康に生きていくために、一生そのフードとお水だけを与えていれば栄養バランスがとれるという食事で、療法食のような栄養の偏りはありませんし、市販されているためペットショップなどのお店で買うことができます。
つまり療法食ならどんな犬猫の体に良いということではなく、健康な犬猫であれば総合栄養食を食べる方が健康には良いのです。
また一般食と表記してあるオヤツや缶詰も多く売られています。
一般食とは、栄養素に不足があるため主食にしてはいけないフードのカテゴリーです。
缶詰やパウチなどの製品は一般食であることが多いために、こればかり食べていると、栄養バランスが取れていない食事になってしまうので注意が必要です。
<犬猫のフード>
・療法食:病気に合わせた食事
・総合栄養食:栄養バランスが取れている食事
・一般食:お菓子のようなもの
自己判断で療法食を選ぶ危険性
上記でも伝えてきた通り、療法食は病気の犬猫にとって良いフードであり、健康な犬猫には適さないものも多くあります。
他の食事を与えてしまうと食事の効果が激減してしまうことも知っておかなくてはいけません。
以下によくある療法食の落とし穴について具体的な例を挙げていきます。
【腎不全が心配な尿石症を持つ猫】
若いときに尿石症と診断され、尿石症用の療法食を処方されていてた猫の飼い主さんが、高齢になってきて腎臓も心配になったとのことで、腎臓もケアと書かれた一般食を与えていたことがあります。
これは尿石症と腎臓食に良いフードを上げているので良いと思われるかもしれませんが、実際は逆効果です。
尿石ができないようにミネラルとタンパク質などを絶妙に調節してバランスを取っている療法食に、腎臓に配慮と書かれていても一般食を与えていては、療法食の栄養素のバランスを乱すことになるので、効果が消されてしまうためです。
この場合、フードを変更あるいは追加するには、まず獣医師に相談し、尿検査や腎臓の検査などを行って、尿石を優先するべきか、腎臓を優先すべきか、治療食以外でのケアの方法はないのかを検討してもらうのが良いでしょう。
【慢性膵炎で治療食の他にオヤツを食べているヨークシャーテリア】
犬の膵炎は低脂肪食を食べることが一つの大切な治療法および再発の予防になります。
そのため、膵炎と診断された犬では低脂肪の療法食が処方されることが多いです。
以前にいた症例では、もともとオヤツをもらうことが多かったヨークシャーテリアに療法食以外にもペースト状の舐めるオヤツをあげてしまっていました。
これでは治療食をあげていても膵炎が再発してしまうことが多いです。
慢性膵炎の犬は食欲の低下や食ムラが出ることが多いので、担当獣医師に相談して、低脂肪のトリーツ(オヤツ)や嗜好性の高い低脂肪の缶詰などを紹介してもらいましょう。
【成長期に腎不全食を与えられていた子猫】
腎臓が悪くならないようにと、腎不全用の療法食を与えられている子猫もいました。
子猫の時期は成長のためにたくさんの良質なタンパク質が必要です。
腎不全用の食事は子猫にとっては、タンパク質が足りずに栄養不良になりかねない悪い食事です。
しかし高い療法食であれば腎臓を守ってくれると子猫のうちからあげてしまう方がいますが、これはとても危険な行為ですので、獣医師の指示なしに療法食を与えることは絶対にやめましょう。
ペットのために良かれと思ってした行動が、後悔を招く結果にならぬよう、ご活用いただけると幸いです。
すべてのワンちゃん、ネコちゃんの健康が守られますよう心よりお祈り申し上げます。
まとめ
犬猫の療法食は病気に対して高い効果を持つとても大切な治療の一つです。
しかし、使い方を間違えると、その効果が半減してしまったり、健康な犬猫には必要な栄養素が足りない、あるいは過剰になってしまうことがあります。
療法食はお薬と同様に獣医師の指示に従って与えることが大切で、独断で療法食を与えたり追加したり途中で辞めてしまうのは危険です。
愛犬、愛猫のために獣医師の指示を守るようにしましょう。
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