2020.03.05健康 , 知識

ネコちゃんに多い病気(異物誤食のこと:後半その2)

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veterinarian surgery in operation room take with art lighting and blue filter

こんにちは!松波動物病院メディカルセンター獣医師の松波登記臣です。今回は『ネコちゃんに多い病気(異物誤食のこと:後半その2)』をお届けします。前半部分では、『異物誤食』のことやその原因や症状についてご紹介させて頂きました(→前半の記事はコチラから)。そして前回の後半その1は、主に『異物誤食』の動物病院でどのように診断されているのか?などについてご紹介しました(→後半その1の記事はコチラから)。そして今回は、後半その2としまして、『異物誤飲』をどのように治療するのか?についてご紹介させていただこうと思います。

 

※閲覧注意の画像があります(手術画像)。気分が悪くなられた方は即時にブラウザを閉じて頂きますよう、ご理解の程、宜しくお願い申し上げます。※

 

4. 「異物を摘出するためには外科手術が必要です」

前回の記事でもご紹介した異物による腸閉塞や腸重積、さらには消化管穿孔(腸が破れること)が起こっている場合は、100%外科手術が適応となります。ではどのような手術方法が用いられるのか、実際の当院での例を挙げて、ご紹介します。

 

2歳齢の雄のノルウェージャンフォレストキャットのネコちゃんが、1週間前から毎日10回以上の嘔吐を繰り返していました。体重も元々8キロ近くありましたが、この数日食べていないだけで6キロまで落ち込んでいました。近くの動物病院での検査は、血液検査のみ。非常に強い炎症反応が出ており、異物の可能性もありましたが、“腸炎”という診断で点滴などの対症療法をしていました。症状の改善がなかったため、当院にセカンドオピニオン。その時点で、ネコちゃんはかなり強い痛みをお腹から発しており、また数日前に行った血液検査の結果より悪い数値が認められていました。当院で行った検査は、レントゲン検査、超音波検査です。レントゲン検査では、所々に溜まる腸内ガスが確認され、一部消化管が二重に見える所見が確認されました。また超音波検査では、胃の中に明らかに光る(超音波は物質にあたると特徴的な影=シャドーを発します)ものがあり、また十二指腸から下の消化管はすべてコルゲート(前回の記事参照)、さらに明らかな腸重積所見、さらに少量ではありますが腹水が溜まっていることを確認されました。

 

・長期間の嘔吐、食欲不振(稟告)
・体重減少、痛み、虚脱(診察)
・強い炎症反応(血液検査)
・特徴的な腸ガス貯留(レントゲン検査)
・光る物質とコルゲート/腸重積所見、そして腹水(超音波検査)

 

上記項目から、『異物誤飲』による腸閉塞および消化管穿孔が疑われました。緊急手術です。

当院の場合は、『異物誤飲』による腸閉塞や消化管穿孔が疑われる場合、CT検査を実施します。以前私が学会で発表した「消化管内異物におけるCT検査の有用性」という内容にて、CT検査を用いることで異物の発見率および他所見の診断率を検討したことがあります。その結果、『異物誤飲』の際、CT検査を実施することで(感度95% 特異度98%)という驚異的な診断効率の数字を発表しました。つまり、CT検査を用いればほぼ100%で異物の所在、合併症などを診断できるという結果になります(勿論、CT検査の結果を解析する獣医師の経験も重要です)。

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獣医師 松波登記臣

獣医師 松波登記臣

名古屋市にある松波動物病院メディカルセンター副院長の松波登記臣です。臨床獣医師として毎日診療および手術を担当しています。専門分野は、内分泌疾患(糖尿病、クッシング、甲状腺)や肝臓疾患で学位を取得しました。また近年では「痛みが少なく・傷が小さい」内視鏡手術に取り組んでおり、腹腔鏡を用いての避妊手術や各種生検、さらには胆嚢摘出、副腎摘出、肝葉切除などを行っています。