センサー機能から感情表現まで。猫のひげが持つさまざまな役割とは
猫のチャームポイントの1つともいえる、長いひげ。「伸びてきたから…」と、お手入れのつもりで切ってしまう飼い主の方もいますが、実はそれ、絶対にしてはいけないことなのです。
猫のひげは、ただの毛ではありません。触毛(しょくもう)と呼ばれる器官の1つで、体の機能を支える重要な役割を担っています。ここでは、猫のひげが持つさまざまな役割についてご紹介します。
【猫のひげの役割1】獲物を捕まえるためのセンサー
猫はもともと、ねずみや小鳥などの小動物や虫を捕食する生き物です。猫のひげは、これらの獲物の素早い動きを感知して捕らえる、センサーとしての役割を担っています。猫のひげの感知能力はとても高く、目隠しをされても獲物を捕らえることができるほどの能力も、ひげを切ってしまうと捕まえられなくなるという実験結果も報告されています。
また、猫は、獲物を捕まえると口にくわえて押さえ込みますが、このときひげで獲物に触れ、獲物の大きさや体温、体の向きなどを瞬時に感じ取ります。
ひげは、猫が人と暮らすようになる前からずっと猫の生存のために欠かせないものなのです。
【猫のひげの役割2】ものとの距離を測るアンテナ
細いすき間をするすると通り抜けていく猫を見て、「どうしてぶつからないの?」と疑問に思ったことはないでしょうか。
猫のひげの根元にはたくさんの神経が通っており、ひげで感知した情報は瞬時に脳に送られます。そのため、ひげに触れるものや空気の流れから対象物との距離を素早く判断することができ、歩いたり走ったりしながらでもぶつからずに細いすき間を通り抜けることができます。
また、風向きや空気の流れなど微妙な感覚まで察知できる猫のひげは、バランス感覚を保つ役割もあります。猫が塀の上など幅が狭い場所でも安定して歩くことができるのは、耳の三半規管に加えて、ひげが平衡感覚をサポートしているためです。
【猫のひげの役割3】顔を守るためのバリア
猫のひげは、顔全体を囲むように長く広がって伸びていますが、これは、突然の危険や障害物などから顔を守るバリア機能を果たしています。
たとえば、突然上から何かが落ちてきたり、外敵から攻撃を受けたりしたとき、空気の流れやわずかにひげにものが触れた感覚などからいち早く危険を知り、とっさに目をつむったり、顔を背けたりすることができます。ひげで微妙な感覚を察知することが可能なため、視覚で捉えてから行動に移すよりもずっと早く反応し、危険から身を遠ざけることができるのです。
【猫のひげの役割4】感情のバロメーター
「毛が逆立っている」などの体毛の様子や尻尾の様子などに、猫の感情があらわれているといいます。実は、ひげも猫の感情があらわれる場所の1つです。ひげをよく観察してみると、そのときの感情によって、ひげの向きが変化していることが分かります。
たとえば、落ち着いてリラックスしている状態のとき、猫のひげは真横に伸びています。また、目の前の対象物に興味をそそられているとき、ひげは前方に向かって伸び広がっています。反対に、目の前の対象におびえているときは、顔に沿うように後方へ広がっていたりと、ひげの様子を注意して見ておくと、自由気ままで気まぐれな猫の気持ちも察することができるようになるかもしれません。
おわりに
人間のひげとは違い、猫のひげには大切な役割があります。ひげを切ってしまうと、バランス感覚やものとの距離を測る感覚が鈍くなり、運動や遊びを上手にできなくなります。日常の生活も大変不便になるため、大きなストレスを抱える原因にもなり得るでしょう。猫と暮らすなら、ひげの重要性をよく理解して大切に扱ってあげてください。
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